前橋地方裁判所 昭和43年(行ウ)1号 決定 1968年7月15日
東京都練馬区春日町六丁目一四番の八
原告
藤生実太郎
右訴訟代理人弁護士
酒井什
同
君塚美明
群馬県沼田市東原新町一、九一〇番地
被告
沼田税務署長
富沢彰三郎
法務大臣指定代理人
横山茂晴
同
山口三夫
右当事者間の昭和四三年(行ウ)第一号所得税更生決定取消等請求事件につき原告訴訟代理人から移送の申立があつたので、当裁判所は次のとおり決定する。
主文
本件を東京地方裁判所に移送する。
理由
一、本件移送の申立の要旨は、本件訴訟は被告沼田税務署長の原告に対する所得税更正決定ならびに東京国税局長の審査請求に対する裁決処分未定の取消を求めるものであつて不服の実質は同一であるから、原処分庁および裁決庁のいずれの所在地の裁判所も管轄を有するものというべきところ、原告は原処分決定後住所を東京都練馬区内に移転しており、また被告指定代理人は法務省訟務局第五課の担当官によつてなされることが明らかなほか本件関係者のほとんどが東京地方裁判所の管轄地域内に居住しているから当事者に便宜のため本件を東京地方裁判所に移送する旨の裁判を求める、というにある。
二、ところで、本件訴状によれば本件訴訟は原処分庁である被告沼田税務署長のなした所得税更正決定等の処分の取消を求めるものであることが明らかであるから、本件土地管轄は右処分庁の所在地の裁判所に存するのであつて、主張にかかる裁決庁の所在地の裁判所たる東京地方裁判所に当然には存しないものと解すべきである。しかし、一件記録によれば、本件訴提起後当事者間において同裁判所を管轄裁判所とすることの合意が書面をもつてなされたことが認められるから右により同裁判所に本件管轄権が発生したものと解せられる。
そして、一件記録によれば、原告の住所地および原告訴訟代理人所属の事務所の所在地が東京都内にあること、被告の訴訟追行は法務大臣指定代理人である法務大臣官房訟務部の担当官によつてなされることならびに、本件裁決庁が東京国税局であることがそれぞれ認められ、右の事実から本件関係者の多くが東京都内に居住することが推認され、また本件において未だ被告が本案に付き弁論をなさず、また準備手続において申述をなさず、答弁書その他の準備書面を提出していないことが明らかであるから右の事情を総合勘案すれば、訴訟の進行上著しき損害または遅滞を避けるため必要あるものとして本件を東京地方裁判所に移送することが、当事者の意思および管轄制度の趣旨に合致し、相当である。
三、よつて、民事訴訟法三一条に則り主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 安井章 裁判官 松村利教 裁判官 大田黒昔生)